隠蔽された「玄海原発3・4号炉格納容器破損検討報告」[戻る]

 旧JNES(独立行政法人原子力安全基盤機構)が、2013年10月17日に有楽町朝日ホールで2013シンポジウムを開催しています。このシンポジウムで発表された、原子力安全部の中村康一氏の「格納容器の破損防止」の報告の資料が、旧JNESのデーターベースで公開されていました。しかし、旧JNESは、2014年3月1日に原子力規制庁に統合されました。そして、この資料は、原子力規制庁のデーターベースからは削除されました。
 シンポジウムでの資料は講演記録と一緒に、国立国会図書館のデーターベースで見つかりました。

 2013年10月17日は、未だ福島第一原発の過酷事故発生から2年程しか経っていなかったので、玄海原発3・4号炉格納容器破損検討結果報告なども公開されたのだと思われます。

 この報告書の13ページには、PCCV(プレストレスコンクリート格納容器)に18%の水素が含まれ、それに着火して、爆轟が起きた場合のシミュレーション結果が報告されています。
シミュレーション結果は、約4/100秒後に格納容器の一部が2MPa(20気圧)になり、テンドン(注1)は、塑性変形はしていないが、コンクリートは破損する結果になっています。
 この報告書の14ページには、貯水されたキャビティ(注2)に、メルトダウンによって流れ落ちた噴出デブリジェットが水蒸気爆発を起こした場合、3/1000秒でキャビティコンクリートの一部が1MPa(10気圧)になる事を示しています。
 これまで、国内外で行われた水蒸気爆発実験では、噴出デブリジェットの場合の破壊力は比較的に小さいと言われていますが、それでも10気圧が発生しています。
 キャビティに堆積した100トンもの溶融デブリが水素爆発や大地震の余震などのトリガ(注3)で大水蒸気爆発を起こした場合には、格納容器はとても持ちこたえられないと思われます。
 これらの事から、原子力規制委員会は、再稼働に都合の良い実験については公開しますが、再稼働に不都合な実験やシミュレーション結果は非公開にするという、隠蔽体質ともいえる姿勢をとっていると思われます。

(注1)テンドン:(ピアノ線のような引っ張りに強い鋼線)
(注2)キャビティ:(格納容器底部、船底の意味)
(注3)トリガ:(引き金)

◇参考資料:【資料】掲載の「格納容器の破損防止」
(文責 中西正之) 2017年3月27日公開