2017年3月 年度末の原発・フクシマ事故関連の動きを見て感じたこと[戻る]

この3月末は、フクシマ事故から6年経ったこともあり、色々な意味で節目を感じさせる年度末となった。
アメリカの原発大手WH社を買収し世界へ乗り出そうとした東芝は、2011年のフクシマ事故以降の世界の大勢を鑑みることなく突進し、大きな負債を抱えて、倒産の瀬戸際に立たされている。融資を約束する銀行団の圧力もあってか、この3月末、やっとWH社を整理し決別することを発表した。半導体部門も分社化し、これから本格的な入札・売却が始まる。残るインフラ部門とともに、日本国内での原発再稼働・廃炉事業に企業の存続をかけようとしているが、その前途は厳しいものがあるとされる。
最近とんと聞かなくなった「アベノミクス」の3本の矢は、現状、軍需品・原発・インフラ輸出に落ち着いてきたようだ。その原発輸出は、東芝の危機にも見られるように、先細り状態である。残るは、日立・三菱の2社の動向であるが、原発産業は世界的に退潮傾向にあるなか、果たして日本経済をリードする産業といえるのだろうか。

一方、国内では、司法が立て続けに原発の再稼働を後押しする判断をくだした。
大阪高裁による関西電力・高浜原発3・4号機の運転禁止を命じた大津地裁2016年3月9日仮処分決定の取り消し(3月28日)と、広島地裁による四国電力・伊方原発3号機の運転差し止め仮処分の住民側申し立て却下(3月30日)である。判決の詳細は、脱原発弁護団全国連絡会 のホームページを見てほしいが、【消えゆく原発】に掲載した中西正之さんの論考にもあるように、裁判官は「日本の新規制基準に適合しているので安全である」といった論理展開をしているという。
フクシマ事故後、避難指示が出されていた飯舘村・浪江町などかなり広範囲な地域で、この3月末には避難指示が解除され、住民の帰還政策が強化された。2020年のオリンピックに向けて、世界に「安全・安心」をアピールしたい政府・自治体が一体となっての動きではあるが、解除地域の放射線量は決して低くはなく、放射線管理区域に相当する地域がまだまだ散在しているという。とはいえ、政府・自治体の言い分は、「基準値以下になって安全だ」という。そして、区域外避難者への住宅無償提供も終了してしまった。「法律がそうなっているからだ」という。
詳細は、ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)避難の協同センター のホームページを見てほしい。

ここで、あることに気がついてほしい。
国内での司法、政府・自治体の論理が、官僚が決めた基準・法律には決して反しない形で裁判官・官僚らによって行われていることに。
現在過熱化している「森友問題」でも、官僚は、忖度はしたかもしれないが、表だって法律の規定には反していない。法律を細かく解釈するなかで、国有地の安価な払い下げや小学校の認可を行おうとした。実は、原発の安全をいう判決でも、住民の帰還政策でも、同じ論理が主張され続けているのである。
一体、誰のための国家なのか。国民が主権者の国家ではなかったのか。政治家・官僚、さらには電力会社、日立などの大手企業などを利するための法律、制度、そしてそれらを支え、"錦の御旗"とする司法・官僚機構など。この年度末は、様々な事象がつながって、日本社会が抱える政治的・社会的病理が明らかとなった年のように思われる。

(文責 片山純子) 2017年4月3日公開