玄海・原子力発電所3・4号炉、再稼動に関する、各地の動き等 [戻る]

◆現在の概況(2017年3月25日現在)
原子力規制委員会による、玄海・原子力発電所3-4号炉の設置変更許可の審査が終了しました。再稼動は、早ければ7月頃の予定です。
佐賀県に、原子力安全専門部会等が設置され、審議が終了しました。

◆原子力規制委員会
2016年11月9日、玄海原子力発電所3・4号炉、設置変更許可申請書、審査書案が作成、科学的・技術的意見(パブリックコメント)の募集が開始しました。
○原子力規制委員会 第42回規制委員会
意見募集等について
パブリックコメントの募集は、2016年12月9日に、締め切られました。
パブリックコメント内容を精査し、規制委員会の定例会合に諮り、2017年1月18日に、正式合格となりました。
○原子力規制委員会
第56回規制委員会
意見募集の結果等及び発電用原子炉設置変更許可について
○佐賀新聞
玄海3、4号機 規制委新基準の審査に合格
玄海原発審査合格で「地元同意」手続き本格化
玄海原発の審査書要旨
ただし、原子炉安全専門審査会・原子炉火山部会は、第1回目が始まったばかり。
大規模噴火モニタリング等の具体的対処は、未だ決まっていません。
2017年3月25日現在、2回目の開催日等も不明です。
○原子力規制委員会、火山部会
また、降下火砕物の影響評価に関する検討チーム(火山関連)は、3月29日に、第1回目がようやく始まります。即ち、設置変更許可審査の、実効性が問われます。
○原子力規制委員会、降下火砕物の影響評価に関する検討チーム

◆内閣府、各政府機関他
日本政府は、2016年12月9日、全閣僚等で構成する「原子力防災会議」を官邸で開き、九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)の重大事故に備えた佐賀、福岡、長崎3県の、避難計画を了承しました。
議長の安倍晋三首相は「原発事故が起きた場合、国民の生命や財産を守るのは、政府の重大な責務」と表明しました。
○首相官邸・原子力防災会議
玄海地域原子力防災協議会(第1回)は、2016年11月22日に開催されました。
玄海原発の避難計画を策定し、福岡など3県26万人が対象となっています(30㎞ 圏)。
玄海地域原子力防災協議会
○佐賀新聞
原子力防災会議 玄海原発の避難計画了承
原子力防災協緊急時対応 実効性に課題山積
経済産業省は、2016年12月20日、原子力災害からの福島復興加速の基本指針について、閣議決定をしていますが、経済産業省等で定める、放射線管理区域・5msv(4万ベクレル/m2)等には触れていません。
○経済産業省 原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針
原子力被災者支援
また、世耕弘成経済産業相は、記者会見で、九州電力玄海原発の再稼働を巡る周辺自治体の同意に関して、日本国民に丁寧な説明を尽くして、幅広い理解が得られるよう粘り強く取り組みたいと表明しました。
○佐賀新聞
世耕経産相、玄海再稼働に「説明尽くす」
○実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 (経済産業省)
区域、線量、クリアランス等についての整理

◆佐賀県(総合・県知事)
山口・佐賀県知事は、2017年2月14日の記者会見で、佐賀県GM21ミーティングや県議会を通して、再稼動の判断をする旨の見解を述べました。
九州電力玄海原発3・4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、3月22日、佐賀県・山口祥義知事は、4月11日にも臨時県議会を招集し、意見を聴く考えを示しました。
○佐賀新聞
知事、玄海再稼働を4月にも判断 臨時県議会招集へ
玄海再稼働で臨時佐賀県議会、4月11日開会
玄海再稼働・臨時県議会 4月11日招集

◆佐賀県(原子力安全対策課)
玄海原子力発電所3・4号炉の再稼働に関し、第三者委員会が設置されました。
副知事が会長を務め、農水産業、経済、医療、労働、消費者など各界の代表ら約30人が委員となりました。委員会の中に学識経験者6~7人で構成する原子力安全専門部会も設置されました。
玄海・原子力発電所の再稼働に関して広く意見を聴く委員会設置要綱
(目 的)
第1条 県は、玄海原子力発電所の再稼働に関して、様々な観点からの意見や専門的なアドバイスをいただくため、玄海原子力発電所の再稼働に関して広く意見を聴く委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(別表2) 原子力安全専門部会の委員(7名)
氏名 所属・職名 専門分野
工藤 和彦  九州大学名誉教授 原子力工学(原子炉工学)
井嶋 克志  佐賀大学大学院工学系研究科 教授 (地震工学)
出光 一哉  九州大学大学院工学研究院 教授 (原子力工学)
片山 一成  九州大学大学院理工学研究院 准教授 (原子力工学)
竹中 博士  岡山大学大学院自然科学研究科 教授 (地震学)
續 輝久   九州大学大学院医学研究院 教授 (放射線医学)
守田 幸路  九州大学大学院工学研究院 教授 (原子力工学)
原子力安全専門部会は、3月25日時点で、6回開催され、閉幕しました。
専門部会での最終報告書も、県サイトで公開されています。
但し、基準地震動・火山モニタリング、長期避難計画等の重要項目は、ほとんど議論されませんでした。
○佐賀県・原子力安全対策課
佐賀県原子力安全専門部会報告書
原子力安全対策課に関する記事
○佐賀新聞
県原子力安全部会 安全対策など確認終了

◆佐賀県(新エネルギー産業課)
玄海・原子力発電所の再稼働に関して広く意見を聴く委員会は、2017年3月25日時点で、3回開催され、閉幕しました。
玄海・原子力発電所に関する県民説明会も2月21日~3月3日に行われました。
会場は、佐賀県内5箇所(佐賀、武雄、伊万里、唐津、鳥栖)でした。
また、玄海・原子力発電所の再稼働に関するご意見を「県ホームページ」及び「県政提案箱」から受け付けています。
○佐賀県・新エネルギー産業課
新エネルギー産業課に関する記事
○佐賀新聞
再稼働の意見、佐賀県が受け付け 21日からHPと提案箱

◆周辺自治体、他 九州電力玄海原発3・4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関し、佐賀県の山口祥義知事は、2017年3月18日、県内20市町の首長が集う会合「GM21ミーティング」を開き、各首長からは、徹底した安全対策を前提に容認する考えや、重大事故の懸念から反対するなど、さまざまな意見が出ました。住民避難計画の懸念の意見も出されました。
伊万里市長ら3人が改めて反対し、8人が容認し、9人は賛否を明確にしませんでした。山口知事は、終了後、県議会の意見を聴くため臨時議会の招集も検討する考えを示しました。
○佐賀新聞
原発再稼働、反対3容認8 県内市町首長が意見
再稼働、責任どこに 県内首長、国の姿勢疑問視
佐賀新聞社が、この3月に、山口祥義知事と県内20市町の首長に加え、福岡・長崎両県知事と半径30㎞圏にある両県5市の首長に対して原子力政策アンケートをとっています。それによると、玄海・原子力発電所の再稼働について「条件付き」を含めた賛成派が15人で、全体の6割近くを占め、法令の定めがない地元同意の範囲を「立地自治体」(玄海町、佐賀県)としたのは5人だけで、多くは範囲の拡大や国の判断を求めました。
佐賀新聞社が、この3月に、伊万里市の塚部芳和市長は「事故が発生すれば取り返しがつかない」と述べ、嬉野市の谷口太一郎市長は「最終処分が確立されていない」、神埼市の松本茂幸市長は「安全性、安心感に確信が持てない」と反対理由を示しました。
佐賀県の山口祥義知事は、選択肢を選ばず、安全性の確認や住民の理解を前提に「再稼働はやむを得ない」としています。
福岡県の小川洋知事は「国や電力会社が国民に対して説明を行い、理解を得ることが必要」と、長崎県の中村法道知事は「安全性を前提に国が判断されるもの」と答えました。
○佐賀新聞
原発再稼働「賛成」6割 3県知事・25市町首長アンケート
また、平戸市議会は3月23日、最終本会議を開き、議員提出の九州電力・玄海原発の再稼働に反対する意見書を全会一致で可決しました。
○佐賀新聞
平戸市議会、玄海再稼働の反対意見書を可決 30キロ圏初

◆裁判・訴訟等
玄海・原子力発電所の再稼動につき、主に2つの団体が、九州電力、日本政府等と係争中(裁判中)です。
□「原発なくそう!九州玄海訴訟
原告数が1万人を超える、全国一の規模となっています。弁護士も100人を超える規模です。1月27日、新たに仮処分申請が出されました。
玄海原発再稼働禁止仮処分申立書
主な論題は、被害論、避難計画、地震、原子炉の安全基準、等です。
玄海プルサーマル裁判の会
4つの訴訟が進行中です。
○佐賀新聞
玄海原発再稼働差し止め 仮処分申請の審理終結

◆総括
原子力発電所再稼動につき、最も重要なのは、国民の生命財産の保護です。
玄海原子力発電所3・4号炉の再稼動に関し、大きな問題点は3つ。
①長期避難計画が無い。
②放射線被曝の、明確な賠償基準が無い。
③地震・火山等、安全目標の数値等が不明瞭。
・・・この3点が、最大の問題点です。

(文責 久保田浩司) 2017年3月27日更新