「水蒸気爆発は起きない」を前提にした審査合格で良いのか?[戻る]

2017年02月23日の佐賀新聞電子版に「武雄で玄海再稼働に関する県民説明会 水蒸気爆発想定審査せず」の以下の記事が掲載されています。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/408220
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九州電力玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働に関する県民説明会が22日、半径30㎞圏外では初めてとなる武雄市文化会館で開かれ、周辺市町の首長や職員、住民ら117人が参加した。国と九電が、エネルギー政策や安全対策などを説明した上で再稼働に理解を求め、住民からの質疑に答えた。

会場からは「再生可能エネルギーや蓄電池などの開発に国策を転換して」などの意見が上がった。資源エネルギー庁は再稼働の必要性について「現状では電力の安定供給、経済性、温暖化対策でリスクがあり、今すぐ原発を代替できるものではない」などと説明した。

適合性審査を担当した原子力規制庁には、重大事故が発生した場合に水蒸気爆発が起こるかどうかに質問が集中した。規制庁は「海外の知見も踏まえて水蒸気爆発が起きないことを確認している」と繰り返し、万が一、爆発が起こる想定に関しては「審査していない」と答えた。
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<原子力規制庁の加圧水型原発検討グループは「水蒸気爆発は起きない」とし、沸騰水型原発検討グループは「水蒸気爆発は起きる」としている。>

◇参考
玄海原発3・4号機加圧水型軽水炉、電気出力118万kW
柏崎刈羽6・7号機改良型沸騰水型軽水炉、電気出力135.6万kW
福島第一原発1号機
福島第一原発2・3・4号機
沸騰水型軽水炉、電気出力46万kW
沸騰水型軽水炉、電気出力78.4万kW

これまで、川内原発1・2号機、高浜原発3・4号機、伊方原発3号機の再稼働についての現地説明会が行われていて、水素爆発対策についてはかなり質問があり、説明もあったと思われます。しかし、これまでは水蒸気爆発問題とそれが起きた時の格納容器の爆発消失はあまり問題にならなかったように思われます。

しかし、九州電力玄海原発3・4号機(東松浦郡玄海町)の現地説明会は違ってきたようです。
元々、第274回適合性審査会では、改良型沸騰水型軽水炉が使われている柏崎刈羽原発6・7号機の過酷事故対策において、水蒸気爆発の起きる可能性を認めて、ペデスタル(注1)床面の水位の検討を行っています。

原子力規制委員会の第274回適合性審査会合の議事録71ページから81ページに、資料2-1の6/9ページの審査番号266の「FCI(注2)、ペデスタル床面の水位の設定の妥当性について説明する事」の論議が記録されています。資料2-3「重大事故等対策の有効性評価について(補足説明資料)」の71ページから78ページに詳しい説明があります。

東京電力は、大水蒸気爆発をできるだけ少なくするには、初期水張りの水位は低い方が良いが、初期水張りの水位は低いとMCCI反応(注3)が大きく成るので、両方のバランスを取って2mが良いと説明しています。

原子力規制庁の加圧水型原発検討グループと、沸騰水型原発検討グループは、担当者は別々に分かれていますが、同じ原子力規制庁に席を置く担当官です。
しかし、これらの2グループでは、水蒸気爆発が起きるかどうか見解は、180度違います。

そして、玄海原発3・4号機で使われている加圧水型原発の検討グループは、「水蒸気爆発は起きない」との見解を取っているので、水蒸気爆発が起きた時、格納容器の爆発消失があるかないかの安全性の検討は全く行っていません。

玄海原発3・4号機の適合性審査は、何の審査を行っていたのでしょうか。

また佐賀県の原子力安全専門部会は、何の安全審査を行っているのでしょうか。

(注1)ペデスタル:原子炉圧力容器支持用コンクリート製台
(注2)FCI:溶融炉心冷却水反応(水蒸気爆発を含む)
(注3)MCCI反応:溶融炉心コンクリート反応

(文責 中西正之) 2017年2月27日公開