玄海原発3・4号炉が安全とされる"不思議"[戻る]

私が住んでいる福岡市は、玄海原発から約50㎞圏にあり、偏西風の風下にあたる。玄海原発で何か重大な事故があれば、放射性物質が降り注ぎ、日常生活が破壊される可能性は高い場所である。ここに、約150万人もの人が住んでいる。
福島第一原発事故からまもなく6年たとうとしている今、この九州では、川内原発に続いて玄海原発の再稼働が着々と進められている。
原子力規制委員会は、「新規制基準」に合格しましたよ。
九電や、国・多くの自治体は、合格したから安全ですよと言って、形だけの専門委員会の開催、形だけの住民説明会、形だけの避難計画を実施し、事を進めようとしているが、本当に安全だと言えるのだろうか、100%大丈夫ですよと言えるのだろうか。
私のような、文系出身者でど素人である者から見ても、疑問は次々と湧いてくる。

玄海原発では、原子炉格納容器に隣接する形で、使用済み核燃料プールがつくられている。そこには、3号機で578体(789体で満杯なので73.3%の占有率)・4号機で1080体(1243体で満杯なので86.9%の占有率)と多数の使用済み核燃料が保管されている。青森県六ヶ所村の再処理工場が稼働しない中、使用済み核燃料は玄海原発に留め置かれる可能性が高く、3・4号機が再稼働すればあと5年足らずでプールは満杯になるだろうと言われている。プールは一時的な保管場所である。その安全性には疑問符がつくものであるにも関わらず、将来の見込みがないまま、それさえ満杯にしてしまうという計画性のなさには唖然としてしまう。
◇参考資料 毎日新聞2017年2月3日版

玄海原発には原子炉建屋がないのにお気づきだろうか。この2月に入って、福島第一原発2号機の内部写真が次々と公開されている。2月10日付け新聞各紙には「格納容器内、今度は650シーベルト」と報じられ、人が1分浴びれば死に至るという高線量であることがわかった。ロボットの投入によって判明したわけだが、この2号機の場合は、格納容器が2㍍厚みの鉄筋コンクリートでつくられており、原子炉建屋が無事であったために、周囲に高線量が広がることなく、人によるロボット操作も可能で写真が撮れたとされる。ところが、玄海原発には原子炉建屋がない。格納容器は2㍍厚みのプレストレスコンクリートを採用しているが、鋼鉄製の格納容器のような強度は得られないという。福島の2号機に比べて、フクシマ事故の後に再稼働をめざしているにもかかわらず「虚弱」なつくりでしかないという。
◇参考資料  【トピックス】「ロボットによる福島第一原発2号機のペデスタル内点検調査で思う事」
プレストレスコンクリート:テンドン(ピアノ線のような引っ張りに強い鋼線)によってコンクリートに圧縮力のかかったコンクリート。鉄筋コンクリートよりも相当強いので、格納容器作りに採用されたという。

原発の耐震設計の要となっている基準地震動の策定も、最悪の事態を想定していないそうだ。2005年以降の約10年間で5回、基準地震動を超える地震が発生しているそうだ。ここ九州でも、昨年は熊本地震があった。比較的地震が少ない地方とされていた九州でも、地震はあいついで起きている。環境破壊、人体への悪影響が大きい放射性物質を大量に扱う原発である。最悪の事態を想定し、これでもか、これでもかといった何重もの安全へのアプローチがされて建設されていると思っていたのに、基準地震動の設定が甘いのだそうだ。これでは、大きな地震が起こった場合、機器に何が起こるかわかったものではない。
◇参考資料
【資料】掲載の「玄海原発再稼働禁止仮処分申立書」の71~73ページ

では、なぜ、鹿児島の川内原発、愛媛の伊方原発に続いて、佐賀の玄海原発の再稼働が進められているのだろうか。それは、安全な原発だからではない。ここ九州・四国では、フクシマの事故の記憶も薄れ、人びとの反発も少ないだろうという、原子力ムラの予測からだろう。このため、避難計画が満足のいくものでなくても、再びフクシマのような事故は起きないだろうといった甘い思い込みのもとに、避難計画をないがしろにして、不安を主張する声を押し切って再稼働は進められようとしている。
原発事故の恐ろしさは、他の事故と異なり、一旦起きてしまえば取り返しがつかないことになる、故郷を失い、生活を破壊され、生業をなくしてしまうことを私たちはフクシマの事故で知ったはずである。原発は「100%事故は起きません」と言えない限り、動かしてはならない代物であろう。

(文責 片山純子) 2017年2月13日公開、同日修正再公開