東芝の「崩壊」、原子力産業・政府・原発立地地は“他山の石”にすべき[戻る]

昨年末以来、経営危機が伝えられていた東芝は、1月27日取締役会を開き、債務処理方針をほぼ確定した。

アメリカの原発事業にからむ損失が6800億円程度見込み。一方、自己資本は3632億円(2016年9月末段階)であり、そこに当期利益見込み1450億円(2016年11月時点見通し)を加算しても大幅な債務超過となることから、主力の半導体事業を分社化しその株式約20%を売却して2000億円から3000億円の資金を調達し、今回の危機を乗り切るという。

東芝は、2015年に発覚した不正会計問題の処理のため、すでに家電部門や好調であった医療機器部門を売却している。残っていた主力事業の柱は、原発部門・半導体部門・インフラ部門の3つ。その中で、虎の子の半導体部門を切り売りし、膨大な赤字を抱える原発部門を救済するという、企業のリストラとしては“真逆”の方向で危機を乗り切ろうとしている。しかも、上記6800億円程度見込みとされる損失額は、あくまでも見込みであり、原発の安全性が強く求められるようになったアメリカではさらに膨らむかもしれないとされる。東芝は、果たして2017年3月末の決算を乗り切ることができるのか。

「技術の東芝」、国民的番組である『サザエさん』を提供してきた東芝の「崩壊」は、経営陣の判断ミスが大きいとはいえ、安全性を追求していったときの原発事業の採算性のなさ、一旦事故が起これば債務が果てしなく膨らむ原発事業の危険性を強く印象づけるものである。

現在、安倍内閣は、相変わらず、国内での原発再稼働・海外への原発輸出を成長戦略の一つとして掲げ、日立・三菱などの原子力産業を後押ししている。また、国内の原発立地地では、経済性より再稼働を求める声が強い。しかし、私たちは、東京電力福島第一原発事故に続いて、この東芝という大企業の「崩壊」という厳しい現実を、現在間近に見ている。3.11を契機に、世界の原発政策は大きく変貌を遂げつつあることを、強く認識すべきなのではなかろうか。

(参考資料)
・毎日新聞 2017年1月26日 1月27日
・東京新聞 2017年1月27日

(文責 片山純子) 2017年1月30日更新