高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉と日仏が共同開発をめざすASTRID計画  [戻る]

放射能が強く自然界にほぼ存在しないプルトニウムは、原発の使用済み核燃料から抽出され、現在日本は約48トンを国内外に保有するという。広島・長崎に投下された原爆は、前者がウラン型、後者がプルトニウム型であったが、現在の原爆は、量産可能なプルトニウムが主流を占め、プルトニウム約48トンは原爆6000発分に相当するという。
「非核三原則」を掲げる日本は、核兵器生産でプルトニウムを消費することは、現状ない。そして、諸外国から核兵器保有を企図していると疑われることのないように、利用目的のないプルトニウムを持たないと国際的に約束している。
では、どのようにしてプルトニウムを消費するのか。
そのために夢想されたのが、核燃料サイクルで、高速増殖炉でプルトニウムを燃やし、消費した以上にプルトニウムを増やすというものであった。
福井県の「もんじゅ」は、その開発途上の原型炉で、実用化以前のものであったが、約1兆円を投資し、1995年のナトリウム漏れ事故以来、ほとんど稼働していない。
もう一つのルートが、ふつうの原子炉で、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を燃やすプルサーマル発電であった。ふつうのウラン燃料よりも制御棒の利きが悪く取り扱いが難しいとされるが、愛媛県伊方原発3号機(2016年8月再稼働)など、政府がプルサーマル発電の原発の再稼働を急ぐゆえんである。
政府は、2016年12月、「もんじゅ」の廃炉を決定した。しかし、その決定は、核燃料サイクルの中止ではない。原型炉として一定の役割を果たしたと「評価」し、次のステップである実証炉へ移行するためとされ、あくまでも核燃料サイクルの維持を図ろうとしている。
すでに、米・英・独は高速増殖炉開発計画から撤退した。最も積極的だったフランスも、1987年の事故以来、研究は停滞している。しかし、日本は、更なる投資を行い、フランスが2030年頃の稼働をめざしている実証炉ASTRID計画を、すでに人材なども派遣し、共同開発を推進しようとしている。ASTRID計画については、フランスでも「机上のプロジェクト」という声があるというのに、この積極性は何なのだろうか。「プルトニウムを持っていたい」「核燃料サイクルに関わる施設を負債にしたくない」「原発や使用済み燃料を負債にしたくない」等々、一旦動き始めると何があっても止まらない、戦前の軍国主義や戦後のいくつかの公共事業の愚行を見ているようだ。

(参考資料)
・朝日新聞 2016年12月11日朝刊・12月14日朝刊
原子力資料情報室声明(2016.12.21)

文責 片山純子 2016年12月26日公開